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基本的信頼感って、今からでも回復できるの?

基本的信頼感、言葉の意味から分かる様に、生きる土台になる「信頼する」という感覚。

自分を信頼する、他者を信頼する、世界を信頼するという心の機能です。
漠然とした不安や自信のなさの奥には、この感覚が何らかの形で影響している可能性があります。

信じる気持ちの土台、基本的信頼感について

誰かに裏切られたり、信じてたことが間違っていたり、自分を信じられなくなったり、心の安定感や安全感が奪われてしまうような感情や感覚に襲われたことありませんか?漠然と、この信じられない感じがずっとある方もいるかもしれません。
信じるという感情や感覚は私たちの生きる上で、コミュニケーションを図るうえでとても大切なものであるということは、なんとなくは分かっていても、じゃあ、こうしようと思ってもなかなかつかむのは難しいこともあるかと考えます。
実際、その土台には、どんなものがあるのかお話ししていきながら、信じるという感情や感覚の奥深さを探っていこうと思います。

信じることの土台、基本的信頼感とは

基本的信頼とは、エリクソンというアメリカの心理学者が提唱した概念になります。
自分を育てる親及び養育者への、人格的な信頼感を通して、自分がこの世に存在する事を肯定的にとらえ、自分の人生には生きる意味があるということ、生存する価値があるということ、世界を信頼するという感覚を持ちます。
つまり、自分が生きていて大丈夫だという信頼感や自己肯定感であり、自分が自分であるというアイデンティティを養うものになります。
基本的信頼感は、幼児期に形成され、青年期のアイデンティティの獲得、生涯にわたり、自分自身への信頼と他者との関わりの中で育まれていきます。

基本的信頼感を育むということ

基本的信頼感は、幼児期においては、親及び養育者とのかかわりの中で、育むことで養われていきます。
抱っこや添い寝などの心と身体のふれあいの時間を通して、信頼感や安心感を与える事、その時々の要求に応えてくれる、受け入れて守ってくれる存在に絶対的な信頼を寄せて依存していけるという、安全な人間関係を保つことができる状態、安全基地と確信している心の状態です。
幼児に対して、親及び養育者もまた、話しかけたり、微笑みかけたりしながら、心からの愛着行動を繰り返し与えるとき、幼児の心の深い快感とともに、自分は愛されている、守られているという純粋な安らぎの感情が体験されます。この感情や感覚の体験が心の奥深くに安全基地として根付き、自分と他者、世界を信じる事の土台になっていきます。

基本的信頼感の欠如について

自分を信じられない、他人を信じられない気持ち、誰も自分を必要としてくれていない感覚がある場合は、この基本的信頼感が何らかの要因でうまく形成されなかった可能性があります。
先に述べたように、まだ、自分では何もできない時期、うまく要求に応えてもらえなかったり、要求を突っぱねられたり、違う受け答えのされ方が多かった場合、周りの人は自分を傷つけてくる存在であり、無防備でいる事、ありのままの自分でいることを怖がります。
常に、緊張した状態で世界と関わるため、心が満たされるという感覚がなく、自分の価値が分からないまま、他者を信用できないまま、安心できない状態が続いていることでしょう。

基本的信頼感を回復していくために出来る事

子どもの頃に培われなかったら、もう自分を信じる事や他者を信じる事ができない?そんな事はありません。いくつになってからでも、基本的信頼感を回復していく事で、自分を信じられる感覚、他者を信じられる感覚を取り戻していくことはできます。
日常の中で、自分が自分の育て直しをしていく事が大切になります。

安全な環境に身を置く

今の生活環境や職場環境など、自分のいつも過ごしている環境は、あなたにとって、安全な環境かどうかを見直してみましょう。
自分の不安や恐怖が強まったり、何か脅かされるようだったり、気持ちが落ち着かないような場合は、勇気を出してその環境から離れる事。
公的な支援を検討する事も、自分を守り、基本的信頼感を回復するための大切な一歩になります。

自分の中に安全基地を作る

心が不安や恐怖を感じている時、あなた自身に暖かい声をかけ、身体をケアしてあげましょう。
他の人が辛い時にかける言葉を、自分にも言ってあげる事、大切な存在に声をかけるように、その言葉を自分に向けてあげる事。
そして、優しくさすったり、手を当ててみましょう。心地よい感覚に働きかけ、自分は大切にされる存在だという事を体感していきましょう。

人と話す事、人と関わること

最初は信頼できない不安や怖さが出てくるかと思います。少しずつ、人に話してみたり、表現してみたり、自己開示をしていきましょう。
あなたが体験してきた事を、暖かい人とのやり取りの中で上書きしていく事、アップデートしていく事が大切です。一人で抱えず、人に頼っていいという事をあらためて学習する機会を増やしていきましょう。体験の中で育まれる新しい感覚と共に、自分自身が大切にする事、自分が大切にされるという事を学んでいきます。

まとめ

基本的信頼感は、目に見えるものではないし、数値化できるものではないため、感覚や感情を通して体感していくものになります。
自分の感覚や感情自体が、信じられないという感じを持たれている方も多いと思います。
まずは、なんとなくでもいいので、心地よさを味わってみてください。心も身体も、自分の心地よさの度合いを体感していきます。瞑想もオススメです。自分の内側の感覚や呼吸に意識を集中する事から始めてみましょう。
そこで感じたものを紙に書いて、視覚化していくのもいいかもしれません。
一人だと難しい場合は、専門的な知識や経験のある方と一緒に少しずつ、大切に育んでいくといいでしょう。
自分を信頼し、他者を信頼する、その体験の一つ一つが幼い頃とはまた違う、深い体験になっていかれる事と思います。